1ヶ月前、一目惚れした先輩と付き合うことができた。


多分それは、2度目の告白のとき。


1度目は入部してすぐに告白してしまって、丁重にお断りされてしまったけど、毎日のように先輩の教室に行ったり部活の時間に話しかけたりしてから、もう一度告白して、OKをもらった。


その時は本当に嬉しかったし、先輩を幸せにできるのは自分だけだと思っていた。


⋯⋯けど。



「はぁ⋯⋯」


「大きなため息ついちゃって、どうしたの山﨑くん。また真田先輩で悩み事?」


「あぁ、山口か⋯⋯」


「山口ですけど、なにか?ごめんね、真田先輩じゃなくて」



苦笑いしながらそう言って俺の前の席に腰を下ろす山口。


名簿が近くて、部活が一緒で、夕真先輩と仲が良い山口香菜には、1学期からずっと相談に乗ってもらっている。



「なあ、山口。夕真先輩って俺のこと好きだと思う?」


「⋯⋯何言ってるの?好きだから付き合ってるんでしょ。先輩も山﨑くんと付き合えて嬉しそうに見えたけど」


「ほんとに!?」


「うわっ、もう、びっくりするじゃない⋯⋯何がそんなに心配なのよ」



俺の叫び声にのけぞりながら、眉間にシワを寄せてそう聞いてきて、いろいろ相談してきた山口に今更隠すこともないか、と思って口を開く。



「先輩がさぁ⋯⋯先輩から、好きって言ってもらってないんだよね⋯⋯」


「⋯⋯え、はぁ⋯」



何を言ってるのかわからないとでも言うかのような表情をする山口を、小突きたくなる衝動をこらえる。



「好きな人から好きって言われることの大切さ分かる?それだけのために生きていると言っては過言ではないよ?」



いや、結婚もしたいな⋯⋯なんて思っていると、山口はなぜだか悲しそうな表情をする。



「好きな人がいなくて悪かったわね」


「いや、誰もそんなこと言ってないよ」


「⋯⋯って、そんなことより、あんたの悩みが先よ!なんだっけ、好きって言ってもらったことない?」


「あ、あと⋯⋯」


「なに、まだあるの」



なんでちょっとめんどくさそうな顔するんだよ。


山口が聞いてきたじゃんか、と思ってしまったのは心に留めておこう。



「なんか、夕真先輩と仲が良い男の先輩がいるのが気になる」


「えっ、それは初耳!」