+   +   +



「それでは、次回はカップケーキを作るので、当番に当たっている人は買い出しお願いします。お疲れ様でした」



部長のその言葉で、部員たちがぞろぞろと調理室を出ていく。



「せーんぱいっ!帰りましょ!」


「うん。そうだ、今日は少し早く終わったから、どこか寄る?」


「えっ、いいんですか!?じゃあ俺、あそこのカフェの新作が飲みたくて!」



キラキラと目を輝かせながら写真を見せてくる蒼空が、やっぱり可愛くてくすっと笑ってしまう。



「夕真先輩?」



何も言わない私を不思議に思ったのか、少し屈んで私と目線を合わせて顔を覗き込んでくる。


私の身長は156cmで蒼空は170cmだから、約15cmの差があるからそうなるのは仕方がないけど⋯⋯しかたがないけどっ!



「ちょ、あの、心臓に悪いからそういうことしないでもらえると助かります⋯⋯」


「何言ってるんですか先輩、結構前からしてますけど」


「え、あれ?そうだったっけ?」



付き合う前のことを思い出してみるけど、そんな記憶は見当たらない。

 
多分告白されてることが衝撃すぎて他のことを覚えてられなかったんだろうな⋯⋯。


自分の乙女さ(?)に苦笑しつつ、蒼空を促してカフェに向かう。



「そういえば、夕真先輩は体育祭、何に出るんですか?」


「えーっとね、100mと、クラス対抗で玉入れ」



そう言う蒼空は?と聞くと、笑顔で色別対抗リレーと言うから、やっぱり運動神経いいんだなと実感する。



「蒼空って確か赤団だったよね?」


「はい。先輩はピンクですよね?」


「そうだよ。敵だねー」


「敵ですねー」



私達には、たまにこうして沈黙の時間が訪れる。


それが悪いことなのかはわからないけど、時々、蒼空は本当に私と付き合って楽しいのかな、と考えてしまう。


素直に愛を伝えられない私なんかじゃなくて、もっと可愛くて愛嬌がある女の子がいたんじゃないかなって、考えてしまう。




私は本当に、蒼空の横にいてもいいんだろうか。