愛を呑み込んで、さようなら



指輪と手紙の他にかつてお揃いだった雪だるまのキーホルダーがあった。これは私たちが付き合って1年半記念の旅行に行った時だ。ナギは最初から最後までこのキーホルダーをスマホケースに着けて持ち歩いてたっけ。



でも私はジャラジャラしたものが好きじゃないから飾っていたんだけどなんでここにあるんだろう。ナギが勝手にしまったのかな、と想像すると頬が緩くなるのを感じた。



ねぇ、ナギ…私あんなに酷いことされたのにまだ好きだよ。まだ、アナタを思い出してしまうんだよ…今でもこれは夢なんじゃないかって思うけど部屋を見渡したらもぬけの殻で



あぁ、現実なんだ、と別れたことを実感する。ナギ、そこは寒いよね、雪が沢山降ってるよね、海鮮が美味しいよね、周りの人達が暖かいよね…でも。そこは…一人ぼっちだよね



雪だるまのキーホルダーに目をやる。赤色のマフラーがそっと輝いている…私は、もう過去の人だ、もう過ぎ去ったの。だから…忘れないといけない



「…ナギ、ナギ…っ」



嗚咽混じりになった私の声はもうどこにも届かないーー。ただ何も無い部屋に響き、雲ひとつない青空に…空気となって届くだけ。私1人しか居ないもぬけの殻となって響きやすい部屋に彼を呼ぶ私の声が空気となって消えたーー。




ねぇ……私たちどこから間違っていたのかな。



できることならもう一度最初からやり直したい、何度もそう思えるほど、足元を濡らすたくさんの涙が溢れるほど、キミが好きだった。


あの楽しかった記憶を、愛おしいキミの顔や声を、苦しかった涙も、お揃いだったキーホルダーも、ぜんぶ、全部…忘れてしまおう。