自称ぽんこつ令嬢は今日も記憶をなくしたいのに、殿下の溺愛が止まりません。

 リオン様のお部屋はそれは立派なものです。私の部屋も狭くないと思うのですが、その三倍くらいの広さがあります。
 薄いブルーで統一されたお部屋は至る所に金の糸で細やかな刺繍が施されています。

 王妃様がちょうど今、国王様とお会いになられているということ。
 なので先にリオン様のお部屋でお茶菓子を頂きつつ、お待ちすることにしました。

「今日はディアナの好きな、ナッツのたくさん入ったクッキーがあると言っていたよ」

 そう話しているうちに、侍女がお茶とお菓子を運んで来ました。
 侍女はそれぞれお付きの方が決められていて、それに合わせて衣装の色などが違います。

 リオン付きのメイドはこの部屋に合わせた薄いブルーの衣装というように、一目見ただけで誰の侍女なのかということが分かるようになっているのです。

「美味しそうだね、ディアナ」

 確かにリオン様が言うように、目の前に並べられていくお菓子やお茶菓子はとても美味しそうです。
 何度か食べたことがあるので、よく知っています。そして必ず私が来た時に出してくれる紅茶も、いつも同じ物です。

「……」
「ディアナ?」

 所作がとても美しいのに、私はこの侍女さんから目が離せません。
 真新しい服の匂いに、それ以上に気になるのは、今出されたものたち。

 侍女は給仕を終えると、部屋の隅に下がりました。
 私はその姿を最後まで確認してから、お茶菓子に手を伸ばします。

 手に取ったクッキーを二つに割ると、サクッという音と共に、ナッツが一つ零れ落ちる。

「これは食べられません」