自称ぽんこつ令嬢は今日も記憶をなくしたいのに、殿下の溺愛が止まりません。

 いつもそんなことでお心を痛められていた王妃様は、男なんて本当にどうしようもない生き物だとよく嘆いていらっしゃいます。
 そのせいでしょうか、私は本当によく可愛がっていただいているのです。

 今回の私の記憶喪失を装ったことで、王妃様が心を痛めたとなれば、全て私の責任です。
 王宮へはあまり近寄りたくはないのですが、仕方がありません。
 ここは、王妃様にきちんと謝らないと。

「分かりました……。王妃様のお顔を伺いにまいります」
「ありがとう、ディアナ。最近、また落ち込むことが多かったようだから、ぜひとも元気づけてほしいんだ」
「はい、殿下」
「ん?」

 私の返答が気に入らなかったのか、リオン様はぐんっと顔を近づけてきました。
 リオン様の匂いで、心臓が口から出てしまいそうです。

「リオン様」
「うん。二人の時はちゃんと名前で呼ぶ約束だものね」
「はい……」
「さぁ、行こうか」

 私をお膝に乗せたままのリオン様は、背中と膝の後ろに手を回すと、そのまま抱えて立ち上がる。

「り、リオン様。お、おおおお下ろしてくださいませ」
「ダメだよ、転んで記憶がなくなると困るからね」

 なんとも意地悪く、私に微笑みかける。
 このまま気絶して、記憶をなくしたいです。
 私は真っ赤になっているだろう顔を、リオン様の肩にうずめ、せめて他の人に見られないように抵抗だけはしました。