自称ぽんこつ令嬢は今日も記憶をなくしたいのに、殿下の溺愛が止まりません。

 いえその前に、先ほどから何やら他の方向に話が進んでしまっています。
 このままでは、こんな未熟な私が城へ行くことになってしまうではないですか。
 そんなことになれば、婚約者であるリオン様が笑いものになってしまいます。何としてでも回避しなくては。

「殿下、階段も気を付けますし、考え事もやめますので、王宮へ引っ越すというのはさすがに飛躍しすぎていると思うのです」
「そんなことはないよ、もう婚約して長いわけだし。それに考えてみて、ディアナ。王宮の侍女たちのほとんどが行儀見習いなどの貴族だよ。王宮へ上がるというのは、彼女たちと一緒で花嫁修業の一環さ」

 そう言われると、確かに王宮へ上がる貴族の娘などはあまり身分の高くない者や婚約者のいない者で、王宮で仕事をして箔を付けることで結婚相手を探すとも言います。

 私の場合は次期国王であるリオン様の婚約者なので、花嫁修業の一環と言われれば確かにそうなのかもしれません。

「いえでも、そういう大事なことは一度お父様たちに相談しませんと」

 リオン様はとても口がうまい方です。このままだと言いくるめられてしまいます。

「じゃあ、今日はこのまま王宮へ行ってお茶だけしよう。ディアナが倒れたと聞いて、母がとても心配していたんだ。元気な顔を一度見せてやってほしい。それなら、かまわないだろ?」

 リオン様のお母様はこの国の正妃様です。
 私のことを実の娘のようにとても可愛がって下さっています。

 リオン様には他にもお二人の弟君がいるのですが、お二人の側妃様がそれぞれお産みになった腹違いのご兄弟です。

 正妃様の子で第一王位継承者なのですが、それにご納得されていない側妃様たちとの間で昔はよくいざこざが起こっていたようです。

 しかし今は、国王様がリオン様を正式に次期国王にご指名されたことにより、そういった話は聞かなくなりました。