カフェを出たあと、二人は駅の方へ歩き出した。
空はすっかり茜色に染まり、川沿いの並木道を照らしている。
川のせせらぎと風の音だけが耳に届き、休日の夕方の時間がゆっくりと流れていた。
並んで歩きながら、結衣が小さな声で尋ねた。
「……今日は、なんで誘ってくれたんですか?」
陽向先生はポケットに手を入れ、少し照れたように笑った。
「ん? 橘さんのこと、もっと知りたくて。
……前に、診察室の時、橘さん泣いてた時あったでしょ?」
「……っ」
不意に言葉を詰まらせる結衣。
陽向先生は川の流れを見つめたまま、穏やかに続けた。
「あの時のこと、ずっと気になってたんだ。
僕が悪かったんだけど、なんか……橘さんが誰か別の人に怒ってるように見えて。」
結衣は俯いて、少し唇を噛んだ。
(……見透かされてる。)
川沿いの風がふっと吹き抜け、結衣の髪を揺らした。
陽向先生の横顔が、橙色の光を受けて優しく滲んで見える。



