夜勤の時間帯。
病棟の照明は落とされ、淡い非常灯が廊下をぼんやりと照らしていた。
カツン、カツン、とナースシューズの音が静かに響く。
懐中電灯の小さな光が、白い壁をなぞっていく。
「よかった。今日はみんな安定してるみたい……。」
カルテに目を通し、そっと息をつく結衣。
夜勤特有の静けさと、機械の微かな電子音が混じり合う。
そのとき――
廊下の奥から、足音が聞こえた。
結衣は首を傾げ、懐中電灯を向ける。
(患者さん、トイレかしら?)
そう思い、足早に近づく。
しかし、暗がりに浮かび上がったのは、見慣れた白衣の姿だった。
「……陽向先生?」
思わず足を止める結衣。
陽向先生は懐中電灯の光を受け、いつものように柔らかく微笑んだ。
「橘さん。ラウンド中? お疲れさま。」
「……あっ、お疲れさまです。」
心臓がどくりと鳴る。
まさか夜勤中に会うとは思っていなかった。



