蝶々結び【完結】

昼休み。




 秋風がやさしく吹き抜ける屋上の片隅で、柚希と結衣は並んで座っていた。


 屋上は病棟の喧騒から離れていて、昼下がりの穏やかな陽射しが心地いい。



 結衣は、手に持った紙パックのカフェオレをいじりながら、ぽつりと話した。




「……実はね、最近陽向先生のことで、ちょっといろいろあって。」




 その一言に、柚希の目がキラリと光った。
「えっ、やっぱり?!それ“ちょっと”じゃないでしょ!詳しく!!」



「ちょ、ちょっと待って。そんなに食いつかないでよ。」




 結衣は苦笑しながらも、昨日までの出来事を一つひとつ話していった。




 外来での火傷のこと。
 診察室での噂の話。
 そして――あの抱擁。




「……っていう感じで。」




 結衣が話し終えると、柚希はぽかんと口を開けたまま固まった。




「……え、なにそれ? え、なにそれ?!」

「な、なによ。」

「それってもう――告白じゃん!!!」

 屋上中に響き渡りそうな勢いで叫ぶ柚希。





「しーっ、静かにしてよ!」



 慌てて結衣が口を押さえた。

 柚希は目を輝かせながら、体を乗り出してくる。





「だってさ!それ、完全に陽向先生、結衣のこと好きってことでしょ?
 しかも“僕はずっと橘さんしか見てない”とか言われたんでしょ!?
 もうそれ、ドラマの最終回レベルなんだけど!」



「……っ!」


 思い出すだけで顔が熱くなる。



「そんな簡単な話じゃないよ……。」




 結衣は視線を落とし、風に髪を揺らしながら小さく呟いた。





「なんで?だって結衣も……陽向先生のこと、好きなんでしょ?」





 その一言に、心臓がドキンと跳ねた。
 思わずカフェオレを握る手に力が入る。






(好き……?)