午後。
ナースコール対応で走り回る結衣の背後から、
「橘さん、それ、僕が持ちますよ。」と声がかかる。
「いえ、大丈夫です。陽向先生は診察が――」
「診察より、橘さんの方が気になる。」
「えっ?」
陽向先生は笑って、重い備品をひょいと奪い取る。
その腕がすれ違う一瞬、彼の指が結衣の手の甲に触れた。
一瞬のはずなのに、そこから心臓の音が溢れ出す。
「……顔、赤いけど?熱でもある?」
「な、ないです!」
「ほんとに?特別に診察してあげようか?」
「いえ、しなくていいですっ!」
結衣はそっぽを向き、足早に去っていった。
その背中を見送りながら、陽向先生は小さく笑う。
「(はは、…ほんと、可愛いな。)」



