蝶々結び【完結】



病棟のナースステーション。


朝の申し送りが終わり、慌ただしく看護師たちが動き出していた。


結衣はカルテを片手に、いつものように淡々と仕事をこなしていた。



「……あれ?橘さん、朝から真面目モード?」



その声に顔を上げると、いつの間にか陽向先生が目の前に立っていた。


白衣の袖をまくり、カルテを小脇に抱えてニコッと笑っている。



「えぇ、いつも真面目ですけど。」



結衣は、訝しげに陽向先生をちらっと見つめた。




「へぇ?僕の知ってる橘さんは、もっと冷静でクールなイメージなんだけどなー。」


「それ、褒めてるんですか?」


「もちろん。……でも、たまにそのクールさが崩れるとこ、見たくなるけどね。」



唐突な言葉に、結衣の手が止まる。




「……っな、何ですかそれ。」


「別に。ただの本音。」




彼はそう言って、カルテに視線を戻すふりをしながら、唇の端を少しだけ上げた。


結衣は胸の鼓動を抑えようと深呼吸する。



(何なの?この人、なんか油断ならないんですけど。)