蝶々結び【完結】

陽向先生side********





 「(橘さん、やっぱり面白い人だな。)」




 陽向碧は、ナースステーションを出たあと、ひとりでつぶやいた。



 真面目で、冷静で、でも時々、目の奥に火が灯る。
 あの夜、叱られたのに、なぜか心地よかった。





 ――ああいう人、いいな。






 そう思ってから、結衣の笑顔を見たくて仕方がなくなった。



 仕事の合間にちょっかいを出してみたり、冗談を言ったりしてみる。




 でも、彼女はいつも冷静にかわしてくる。



 時々、ほんの少しだけ頬が緩むのを見逃さないようにして。




 (……もう少し、彼女に近づきたい。)




 そんな気持ちを、陽向先生は自分でも持て余していた。






ほどけた糸は、もう二度と結ばない――

結衣はそう思っていた。

けれど、陽の光のような笑顔に触れた時、
その糸は、静かに揺れ始めていた。