蝶々結び【完結】



 「あ、橘さん。今日、夜勤一緒だよね?よろしくお願いします。」


 声の主は、白衣の袖を少し折り返した陽向先生だった。


 明るい笑顔。どんな人にも壁を作らないその雰囲気は、相変わらず“太陽みたい”だ。



 まさか、早速名前を覚えているなんて。


 結衣は少し驚いたが、表情に出さないように努めた。



 「はい、陽向先生。こちらこそ、よろしくお願いします。」



 淡々と、いつもの距離感で。

 彼の笑顔に動揺しているなんて、悟られたくなかった。



 そんな結衣を横目に、同僚の柚希はすでにテンションが高かった。



 「うわー、ほんとにTHE・爽やかイケメンだね、陽向先生!まぶしい!」


 「柚希、声が大きい。」


 「だってさ、あんな人と夜勤とか羨ましすぎでしょ!」


 「……はいはい、仕事、仕事。」



 苦笑しながらカルテを確認する結衣。

 そんな様子を、陽向先生は穏やかに眺めていた。