『いよいよクリスマス本番!皆さんはどのように過ごしますか?』
つけっぱなしにしていたテレビから、きらびやかなBGMとイルミネーションの映像が流れる。
『家族や友達、恋人など、大事な人と過ごす人も、1人で静かに過ごす人も、今年のクリスマスは少し、贅沢してみませんか?』
若いカップルが画面上でいちゃいちゃしているのを無表情で眺めながら、髪の水気をタオルで吸いとる。
テレビのきらびやかなBGMから逃げるようにして私はドライヤーのプラグをコンセントに差し込んでドライヤーをONにする。
聴覚はドライヤーに乗っ取られたけど、きらきらしたテロップと映像は嫌でも目に入ってきてしまう。
「ふわぁ…」
小さくあくびをしてから、私はシャッターを下ろすようにしてまぶたを下ろした。
目の奥で万華鏡のように、モノクロの模様が広がっていく。
真っ黒になった私の世界には、ドライヤーの音だけが響いていた。



