ーーーコンコン
「…っ!」
「…千歳?どうしたのそんなびっくりして」
「あ、いやなんでもない…」
樹とキスをしたあの日から私は樹と今まで通りに喋れなくなって面会を知らせる病室のノック音でさえ強ばる。ノック音に緊張しても樹は来ないのに… なんというタイミングか…樹は風邪を拗らせ1週間の外出禁止令をお父さんから直々に出されていた。
「それでどうしたの、お母さん」
「あ、そうだった。千歳にはい、これ」
「なに?これ」
「お父さんやっと出張から帰ってきたの。そのお土産よ」
「お父さん帰ってきたの!?しかもこれ東京ばな奈じゃんっ、私の大好きなやつ!」
「ふふ、よかったわね…本当は今日もお父さん来る予定だったんだけど出張中の激務でクマもコケも酷いから今日は私が無理やり休ませたのよ。でも行く行くってうるさくてね… だから無理やり家に置いてきちゃった」
ふんっと息を吐くお母さんに私は思わず笑みが零れる。
「でもそっか、入院してからは初めて会うんだねお父さんに」
「そうね、お父さんが出張行ってから2ヶ月だから…1ヶ月ぶりねぇ」
「…早く会いたいな」
「えぇ…」
そうしてお母さんとの面会が終わり、私は1人屋上へと来ていた。私が入院してから初めて屋上来た時もこんな綺麗な空だったな…あれからもうたくさんの時間が経ったんだな… 澄んだ綺麗な空を見上げると太陽がサンサンと輝いていて…それが目を瞑りたくなるくらい眩しくて… 屋上にいる時間と樹と話している時間は 病気 があるってことを忘れられる唯一の時間
たしかにあの時…樹と手を繋いでキスをしたんだ… 空高い太陽まで聞こえそうな元気で暖かい言葉が私の脳に響く。
『 頑張って医者になって千歳の病気治すから 』
『 好きだ、千歳 』
『 だから僕にその命預けて 』
樹の顔と声を思い出すだけで苦しくなって胸に温かさを覚える…あの日重なった2人の唇から届く樹の体温は手と同じ暖かくてどこか安心を覚えるキスだった、本当にこの時間が永遠に続けばいいのに、と弱音を零したくなる。
「…綺麗だなぁ」
ーどこかに真っ直ぐ伸びる飛行機雲
ー優しい色をしているホワイトブルーの空の色
ー鳥が鳴きながらどこかへ飛んでいる
ー太陽はサンサンと眩しく綺麗に輝いている
ーーパシャ
手に持っていたカメラで写真を1枚撮る。
「ふふ、綺麗だな」
「あ、いた…千歳!」
「お母さん!?どうしたの?」
面会が終わってるというのに屋上に来た上に母が屋上に来るのはとても珍しく私は慌ててカメラをしまい駆け寄る
「外出許可が…出たのよ」
「え?」
「元々は発作予防とドナーが見つかるための入院だったじゃない?でも最近は発作も出てないし症状も安定してるから一時的な退院だって」
「ほんとに!?やった」
「ふふ、明後日には退院だから、用意するのよ」
「うんっ」
「それが言いたかっただけなの、じゃあまたね」
「…明後日、迎えに来るわね」
「うん!」
私の入院生活は思わぬ所で幕を閉じた。あの澄んだ空と同じように私の心も綺麗に澄んでいた、それにしても樹にはどう伝えようかな、連絡先なんて交換していないし私は明後日退院するからギリギリすれ違いになるだろう。
「……」
これでお別れなのか、と私は頭を悩ませた。
「あ、」
私は病室に戻りナースコールを押し 朔摩先生を呼んでください と伝える。
「千歳ちゃん、どうしたの?」
「えっと、私発作とか落ち着いて明後日退院することになったんです」
「そうなのか、おめでとう」
「ありがとうございます…でも樹くん1週間風邪で寝込んでるって聞いてギリギリすれ違うかなって思って。だから先生の方から伝えて欲しくて」
「そうか、わかった。連絡先とかは?」
「あ、これ私の番号です。樹くんにお願いします」
「わかった、それにしても外は菌がすごいからちゃんと手洗いうがいとかするんだよ」
心配そうに私の顔を覗き込む朔摩先生の顔はどこか樹に似ていてやっぱり親子なんだなと思った。
「ありがとうございます」
「うん、じゃあまたね」
病室のドアを閉めこと、こと、と廊下を歩く足跡が遠のいていく。これで樹とは大丈夫、かな。
ーーそうしてようやく退院の日が来た。
「今回は一時的な退院だからまた来月からは様子見とかで入院していくからね。風邪か発作に気をつけるようにね?薬も多めに入れてあるから」
「何から何までありがとうございます。」
「いえいえ、じゃあね、千歳ちゃん」
「はい、ありがとうございました。」
「家なんて久しぶりでしょう?お父さん今日も仕事だけど夜には帰ってくるから、みんなでご飯食べよっか」
久しぶりのお母さんのご飯で、久しぶりに家族みんなが揃う。楽しみだな
「そうそう、学校には休学届出して受理されてるから大丈夫よ」
「うん、ありがとう」
家に着いた私は荷物を持ち自分の部屋へ行き入院生活で使っていた自分のものを元あった場所に戻し終えたらベットへと飛び込む。
「やっぱりここが落ち着くなぁ」
ベッドに寝転んだままカメラで撮った写真を見返す
「樹、」
会いたいな、今は何してるんだろう。風邪で寝込んでるって言ってたから熱下げるために頑張ってるのかな?それとも寝てるのかな?樹が居ないのに頭の中で樹のことを考えるだけでこんなに胸が温かくなってドキドキする。
『 キミがこの病気を完治したらお嫁さんになってくれる? 』
『 完治できたのならね 』
あの日の2人の声が私の頭に聞こえる。優しい音色で私に伝えてくれる樹の声…それに対して私は緊張したような震えた拙い声。それでも樹はこの声が好きと言ってくれた。
『 全部治してみせるから、この指輪をはめてくれないか 』
そうしてウサギさんの指には綺麗な花で作られた指輪がはめられていた。クマさんはそれにそっとキスをして微笑んだ
『 クマさんたら気が早いよ 』
クマさんのセリフを樹が、ウサギさんのセリフを私が。今は全部一人で読んでるけどいつかまた樹と肩を並べて読めたらいいな…。
一度は諦めかけた命、一度は全部投げようと決めた命なのにキミが受け止めてくれた。
「会いたい、樹…っ」
ーープルルルル 私が声に出した途端震えた携帯
「…!もし、もし?」
「…もしもし」
携帯の向こうには私の愛おしい人の声が聞こえた。
「いつ、き…」
電話越しだから?それとも風邪だから?いつもと違う樹の声で、いつもより低くて掠れてて。そんな声でさえドキッとする
「退院、おめで…ゴホッ、ゲホ…っ」
「樹、風邪なんでしょ?無理しなくていいから寝ときなさいよ」
「大丈夫、僕が祝いたかった、だけだからっ」
「…熱、何度くらいあるの?」
ーーピピピ
私がそう言い終わった時電話越しに体温計の測り終わった音が聞こえた。
「ん、今37度だった、さっき計ったら38度で…」
やっぱすごいね、と声を漏らす樹に私は何が?と答えると少し恥ずかしそうに間を開けてからこう言う。
「い、や…」
「…?」
「好きな人の声ってやっぱすげぇなって」
「…っ」
ー樹はいつも私が喜ぶ言葉をくれて、励まし隣に寄り添ってくれる。
「わ、たしも…寂しかったから」
「はは、っ」
「……」
「…かわいい」
「…!?」
ー甘くて、ずるくて、意地悪で、ほんの少し優しさを残した低い声。
「多分、今日でよくなると思う。…明日あおっか?」
「いや、でも治ったばかりだからダメかな…」
「私も会いたいから、いいの…会お?」
「…う、うん」
「明日無事に元気に会うためにももう樹は寝てなよっ、私も休学中で追いつくために勉強するから」
「わかった、じゃあまた明日な」
「うん、またね」
ただいつまで経っても電話を切らなかった樹… そのまま電話が切れると思っていた私は 樹?と疑問をぶつける
「…忘れ物した」
「え?どこに??私取ってこようか?」
「…ここに、忘れ物した」
「…?」
樹の言っている意味が分からなくて思わず首を傾げる
「千歳…」
「うん?」
「好きだよ」
「…っえ」
キミは、いつもずるくて甘い言葉を残す…。
「わ、忘れ物ってそれだったの?」
「柄にもなく」
「ふふ、…私もすき」
今度こそじゃあねとお互いに声を交わし
ーーープツン
電話が切れる音がする。明日会えるから、明日会おうねって約束したから電話が切れても寂しくないはず。思い出しても寂しくならないように樹の声を頭の隅に置いて私は携帯を置き勉強デスクへと向かう。
「…っ!」
「…千歳?どうしたのそんなびっくりして」
「あ、いやなんでもない…」
樹とキスをしたあの日から私は樹と今まで通りに喋れなくなって面会を知らせる病室のノック音でさえ強ばる。ノック音に緊張しても樹は来ないのに… なんというタイミングか…樹は風邪を拗らせ1週間の外出禁止令をお父さんから直々に出されていた。
「それでどうしたの、お母さん」
「あ、そうだった。千歳にはい、これ」
「なに?これ」
「お父さんやっと出張から帰ってきたの。そのお土産よ」
「お父さん帰ってきたの!?しかもこれ東京ばな奈じゃんっ、私の大好きなやつ!」
「ふふ、よかったわね…本当は今日もお父さん来る予定だったんだけど出張中の激務でクマもコケも酷いから今日は私が無理やり休ませたのよ。でも行く行くってうるさくてね… だから無理やり家に置いてきちゃった」
ふんっと息を吐くお母さんに私は思わず笑みが零れる。
「でもそっか、入院してからは初めて会うんだねお父さんに」
「そうね、お父さんが出張行ってから2ヶ月だから…1ヶ月ぶりねぇ」
「…早く会いたいな」
「えぇ…」
そうしてお母さんとの面会が終わり、私は1人屋上へと来ていた。私が入院してから初めて屋上来た時もこんな綺麗な空だったな…あれからもうたくさんの時間が経ったんだな… 澄んだ綺麗な空を見上げると太陽がサンサンと輝いていて…それが目を瞑りたくなるくらい眩しくて… 屋上にいる時間と樹と話している時間は 病気 があるってことを忘れられる唯一の時間
たしかにあの時…樹と手を繋いでキスをしたんだ… 空高い太陽まで聞こえそうな元気で暖かい言葉が私の脳に響く。
『 頑張って医者になって千歳の病気治すから 』
『 好きだ、千歳 』
『 だから僕にその命預けて 』
樹の顔と声を思い出すだけで苦しくなって胸に温かさを覚える…あの日重なった2人の唇から届く樹の体温は手と同じ暖かくてどこか安心を覚えるキスだった、本当にこの時間が永遠に続けばいいのに、と弱音を零したくなる。
「…綺麗だなぁ」
ーどこかに真っ直ぐ伸びる飛行機雲
ー優しい色をしているホワイトブルーの空の色
ー鳥が鳴きながらどこかへ飛んでいる
ー太陽はサンサンと眩しく綺麗に輝いている
ーーパシャ
手に持っていたカメラで写真を1枚撮る。
「ふふ、綺麗だな」
「あ、いた…千歳!」
「お母さん!?どうしたの?」
面会が終わってるというのに屋上に来た上に母が屋上に来るのはとても珍しく私は慌ててカメラをしまい駆け寄る
「外出許可が…出たのよ」
「え?」
「元々は発作予防とドナーが見つかるための入院だったじゃない?でも最近は発作も出てないし症状も安定してるから一時的な退院だって」
「ほんとに!?やった」
「ふふ、明後日には退院だから、用意するのよ」
「うんっ」
「それが言いたかっただけなの、じゃあまたね」
「…明後日、迎えに来るわね」
「うん!」
私の入院生活は思わぬ所で幕を閉じた。あの澄んだ空と同じように私の心も綺麗に澄んでいた、それにしても樹にはどう伝えようかな、連絡先なんて交換していないし私は明後日退院するからギリギリすれ違いになるだろう。
「……」
これでお別れなのか、と私は頭を悩ませた。
「あ、」
私は病室に戻りナースコールを押し 朔摩先生を呼んでください と伝える。
「千歳ちゃん、どうしたの?」
「えっと、私発作とか落ち着いて明後日退院することになったんです」
「そうなのか、おめでとう」
「ありがとうございます…でも樹くん1週間風邪で寝込んでるって聞いてギリギリすれ違うかなって思って。だから先生の方から伝えて欲しくて」
「そうか、わかった。連絡先とかは?」
「あ、これ私の番号です。樹くんにお願いします」
「わかった、それにしても外は菌がすごいからちゃんと手洗いうがいとかするんだよ」
心配そうに私の顔を覗き込む朔摩先生の顔はどこか樹に似ていてやっぱり親子なんだなと思った。
「ありがとうございます」
「うん、じゃあまたね」
病室のドアを閉めこと、こと、と廊下を歩く足跡が遠のいていく。これで樹とは大丈夫、かな。
ーーそうしてようやく退院の日が来た。
「今回は一時的な退院だからまた来月からは様子見とかで入院していくからね。風邪か発作に気をつけるようにね?薬も多めに入れてあるから」
「何から何までありがとうございます。」
「いえいえ、じゃあね、千歳ちゃん」
「はい、ありがとうございました。」
「家なんて久しぶりでしょう?お父さん今日も仕事だけど夜には帰ってくるから、みんなでご飯食べよっか」
久しぶりのお母さんのご飯で、久しぶりに家族みんなが揃う。楽しみだな
「そうそう、学校には休学届出して受理されてるから大丈夫よ」
「うん、ありがとう」
家に着いた私は荷物を持ち自分の部屋へ行き入院生活で使っていた自分のものを元あった場所に戻し終えたらベットへと飛び込む。
「やっぱりここが落ち着くなぁ」
ベッドに寝転んだままカメラで撮った写真を見返す
「樹、」
会いたいな、今は何してるんだろう。風邪で寝込んでるって言ってたから熱下げるために頑張ってるのかな?それとも寝てるのかな?樹が居ないのに頭の中で樹のことを考えるだけでこんなに胸が温かくなってドキドキする。
『 キミがこの病気を完治したらお嫁さんになってくれる? 』
『 完治できたのならね 』
あの日の2人の声が私の頭に聞こえる。優しい音色で私に伝えてくれる樹の声…それに対して私は緊張したような震えた拙い声。それでも樹はこの声が好きと言ってくれた。
『 全部治してみせるから、この指輪をはめてくれないか 』
そうしてウサギさんの指には綺麗な花で作られた指輪がはめられていた。クマさんはそれにそっとキスをして微笑んだ
『 クマさんたら気が早いよ 』
クマさんのセリフを樹が、ウサギさんのセリフを私が。今は全部一人で読んでるけどいつかまた樹と肩を並べて読めたらいいな…。
一度は諦めかけた命、一度は全部投げようと決めた命なのにキミが受け止めてくれた。
「会いたい、樹…っ」
ーープルルルル 私が声に出した途端震えた携帯
「…!もし、もし?」
「…もしもし」
携帯の向こうには私の愛おしい人の声が聞こえた。
「いつ、き…」
電話越しだから?それとも風邪だから?いつもと違う樹の声で、いつもより低くて掠れてて。そんな声でさえドキッとする
「退院、おめで…ゴホッ、ゲホ…っ」
「樹、風邪なんでしょ?無理しなくていいから寝ときなさいよ」
「大丈夫、僕が祝いたかった、だけだからっ」
「…熱、何度くらいあるの?」
ーーピピピ
私がそう言い終わった時電話越しに体温計の測り終わった音が聞こえた。
「ん、今37度だった、さっき計ったら38度で…」
やっぱすごいね、と声を漏らす樹に私は何が?と答えると少し恥ずかしそうに間を開けてからこう言う。
「い、や…」
「…?」
「好きな人の声ってやっぱすげぇなって」
「…っ」
ー樹はいつも私が喜ぶ言葉をくれて、励まし隣に寄り添ってくれる。
「わ、たしも…寂しかったから」
「はは、っ」
「……」
「…かわいい」
「…!?」
ー甘くて、ずるくて、意地悪で、ほんの少し優しさを残した低い声。
「多分、今日でよくなると思う。…明日あおっか?」
「いや、でも治ったばかりだからダメかな…」
「私も会いたいから、いいの…会お?」
「…う、うん」
「明日無事に元気に会うためにももう樹は寝てなよっ、私も休学中で追いつくために勉強するから」
「わかった、じゃあまた明日な」
「うん、またね」
ただいつまで経っても電話を切らなかった樹… そのまま電話が切れると思っていた私は 樹?と疑問をぶつける
「…忘れ物した」
「え?どこに??私取ってこようか?」
「…ここに、忘れ物した」
「…?」
樹の言っている意味が分からなくて思わず首を傾げる
「千歳…」
「うん?」
「好きだよ」
「…っえ」
キミは、いつもずるくて甘い言葉を残す…。
「わ、忘れ物ってそれだったの?」
「柄にもなく」
「ふふ、…私もすき」
今度こそじゃあねとお互いに声を交わし
ーーープツン
電話が切れる音がする。明日会えるから、明日会おうねって約束したから電話が切れても寂しくないはず。思い出しても寂しくならないように樹の声を頭の隅に置いて私は携帯を置き勉強デスクへと向かう。

