心臓に囚われた、ボクの心。



ー 千歳 side ー


「…千歳、手術今日だね」


「うん…」


「どうしたの?元気ないね」


「手術、怖くなっちゃって」


「……大丈夫、僕がいるよ」


大丈夫と言いながら頭を撫でてくれる樹の顔が寂しそうで。樹から伝わる緊張は何に対してなのだろう。


「…うん!」


───ねぇ、樹。キミはいつも私に温もりをくれて、君は私にいつも寄り添ってくれて…不安や悲しみを取ってくれて。そんな優しさと温かさだけを残していくね…


私は…一生懸命キミに恋しているんだ、樹のために。手術頑張ってくるからね…応援しててね。



「千歳」


「ん?」


「…ちとせ」


「…うん?どうしたの?」



「千歳、何度でも呼びたい、好きな人の名前だから…好きな人の名前だからずっと呼びたい、声が枯れても…」


「…樹」



───私も樹の名前を呼びたい。好きな人の名前だから…。


ずっと、何度でも、あの青い空に向かって大きな声で───




「千歳」


「……」


「…千歳」


「うん…」



何度も、角度や温度を変えて唇を重ねていくキスは優しさや温もりは無くて。支配や独占、離さない…と誓った黒色のキス



「いつ、き。…ありがとう」


「…え?」


───ゆらゆらと不安げに揺れてる茶色の瞳が、私を捕らえて離さない。


「樹のおかげで、不安なくなったよ」



「…っ、よかった」


「私、頑張るから」




樹…渡したい物があるの、なんて今は言わない。



私の手術が終わったら、樹がずっと欲しがってたお揃いのブレスレットをあげるんだ。



綺麗なエメラルド色の小さな箱に入ってるブレスレットは私の病室の引き出しに入ってる。



小さな手紙も書いたんだよ、あとで読んでね、





「千歳ちゃん、もうそろそろ手術だよ、こっちおいで」


「はいっ」



「……じゃあね、千歳」


───ちと…」


「樹!また後でねっ」


「……



“また後で”なんて彼にはもう残されていないのだと、この時の私はまだ知らなかったよ──。



…うん」



「千歳!頑張るのよ…?」


「お父さんもずっと手術室の前にいるから安心して行ってこい」


「お父さん、お母さん…うん!行ってきます」


「行ってらっしゃい」


「……」


「千歳、どうしたんだ?そんなにキョロキョロして」


「いや、樹がいないなって…」


お母さんお父さんと話してる間にどこかへ行ってしまった樹をキョロキョロして探すが周りには居らず…



「あ、い、樹くんは…」


「え?」


「樹くんはね、家の用事でちょっと席外してるの。でもすぐ戻ってくるわ」


「そ、っか…わかった!」


「…千歳ちゃん、そろそろ」


「はい」



そうして私は手術室へと向かう、大丈夫、私なら、きっと…大丈夫… そう信じ私は手術室へと向かった。