ーー生まれつき私の心臓は普通の人と比べて弱かった。
だからだろうか…恋をする鼓動がうるさいのも
発作がおきた時いつも苦しすぎるのも
生きたいと思えるほど素敵な人に出会う私の心臓ー。
全てが新しい世界で、私は…ー。
「千歳、そろそろ行くけど準備できた?」
「お母さん…うん大丈夫だよ」
「もう発作おきたらダメだから、ドナー見つかるまでの入院よ…きっと千歳にはいいドナーが現れるわ。」
「…」
お母さんのその真っ直ぐとした期待と心配が痛い
「…うんそうだね」
「さ、行くわよ」
母の車に揺られること1時間半…この街で1番大きい瀬戸外病院へと向かい、そして病院へ着く。
「はい、はい…」
母と共に病院へとつきゆっくりする間もなく私1人待合室へと残し受付へと行ってしまった。受付の他にも説明や入院手続きなど色々済まさないといないので時間はかかるようで…。
「…どうしてこんなに弱くなったんだろ」
ふと私の声が待合室に溢れる。幸い私以外に目立ったお客さんは居ないから声は聞かれてないかもだけど、うっかり声をこぼしてしまった。そして母の受付長くなりそうだしな、とふと本棚を見ると私が今まで気になっていた小説の 夜明けて、目覚める死人 があった。これは前から買いたかった小説なのだが買えなくて、ここで読めるというのは嬉しい。
その本棚に近付き手を伸ばすとある人と手が重なった
「…!」
「…っ」
「あ、えっと…ごめんなさい。良かったらどうぞ」
「え?いやこちらこそごめん…僕はいいよ、君が読みな」
私の腕に巻かれている番号札を見て気を使って譲ってくれたのだろうか?その気遣いは嬉しいけどいらないと感じてしまう。
「え…でも」
「いいから」
「僕は大丈夫、家の近くに本屋あるし。」
「でも待ち時間退屈なんじゃ…?」
「ここにはお父さんの用事で来ただけだから、いいって。」
と、本を取り両手で私に差し出してくれる。
「…ありがとうございます」
「うんっ」
ーー太陽みたいな人だと思った、優しくて微かに触れた手が暖かくて…でも目は優しさと強さで燃える太陽。
「じゃあね」
と手を振り居なくなった彼、太陽…
まともにお礼すら言えてないのになぜそんなに眩しい笑顔で私に手を振ってくれたんだろう、また今度があるか分からないけど会えたら沢山お礼を言おう。
「…ありがとう」
私の声は彼にはもう届かないかもしれないけれど拙くも私は彼にお礼を告げる。
そうして小説を読み始めて数十分経った頃だろうか…クタクタのお母さんが受付カウンターから帰ってきて
「ごめんね、遅くなっちゃった…これ、入院証と面会カードね。今日は面会カード使わなくていいみたいだけど面会する時はこのカードがいるらしいからお父さんに言っとくわね。」
「ありがと、行こ」
「ええ」
そうしてお母さんと私二人で病院のエレベータを使い私の病室まで病室まで行き病室のドアを開けると私の主治医が居て
「椎名さん、お待ちしておりました。 話はお母さんから聞いているよ、今からが楽しいって時に入院なんて辛いよね、でも!僕が良くしてみせるから安心してねっ」
冗談っぽく笑い左腕をバシバシ叩く私の担当医ー 菅原先生は本当に私に良くしてくれた。
「ご迷惑をかけるようで申し訳ありません、娘のことを宜しくお願いします…」
ぺこりと頭を下げるお母さんを見て私も軽くお辞儀をする
「僕の方こそよろしくお願いします…一緒に頑張ろうね」
「はいっ」
ーそれから私の入院生活は始まった。消灯時間は早いし発作が出ないようにする薬も副作用で辛いしお風呂なんか毎日入れなくてあんなに艶があった私のボブヘアーは今はボサボサ… それでも頑張れたのはお母さんの期待と菅原先生の元気さとあの彼のあの日見た笑顔だった。
それから入院生活が始まって1週間後
「…じゃあお母さんもう帰るね、また明日も来るから」
「お母さん、もういいよ…?」
「…え?」
「仕事休んでまで来てくれるのは嬉しいけどドナー見つかるまでの入院だからどこか怪我して入院したわけじゃないの、…だからそんな頻繁に来なくて大丈夫」
「千歳…」
私の目の奥に悲しそうなホッとしたようなお母さんの顔が目に映る。お母さんは私の事心配しすぎなんだよ、最近寝れてないのもわかってる、目の下にクマができてるもん。
「私は大丈夫」
とびきりの笑顔とピースを見せた私は ね? とお母さんにかけた
「え、えぇ、そうね、千歳だもの、大丈夫よねきっと。ありがとう。じゃあ、また今度ね」
寂しそうに私に手を振るお母さん…これでよかったんだ。私のことよりも自分のことを心配して欲しいのに…。頭上にあるナースコールをポチッと押すー。そして少し時間があいて看護師さんが私の病室をノックし入ってくる。
「…気分転換に屋上行きます。」
無断で行ったらダメだとお母さんにこの間言われたのでナースコールを押し伝える、すると看護師さんは わかりました、でも30分以内ね と私に言う。久しぶりの外で久しぶりの青い空で鼻の奥にツンっとどこからか香る薬品の匂い。
「……」
「ドナー、見つかるかな」
個室からたまに見えるこの飛行機雲は私の心を凍てつかせる。雨が降ったり、曇りだったり、快晴だったり、空には色んな天気があって色んな日がある… けれど私の心は一方通行で、体調がいい日はそう何度も繰り返さない。だからこそこの青い空を見たとき弱音がこぼれた。
青い空に向かって零れた弱音は誰にも聞こえることなく澄んだ空気の中に息として混ざり消えた。
ーー何分いただろうか。青い空はやがて夕焼け色に染まり夕方を知らせる。空って不思議だなと思った。雲ひとつで時間がわかるようになっている、いやすごいのは人間か?この空を見ただけで夕方か分かるのだから…。
と、意味の無い考えを脳に張り巡らせる。
「あ、30分以内って言われてたんだった…」
今更ながらに思い出す約束をふっと消し病室に戻ろうとする私の手を引き寄せたある人ー。
「…っ、まって」
「え?」
「……この間ここに入院しているって見たから」
「う、うん?」
たしかにあの頃の私の腕には入院患者がつける番号札が私の腕にはあったけど今も入院している確証なんてないのにこの人はわざわざ私の元へ…?
「初めて見た時から思ってたんだ、君と仲良くしたいってね」
「…!」
「僕と同じ小説が好きな人は学校にも家族にもいなくて、…初めて見つけた同じ好みの人」
「あ、あの小説面白いよね。私大好きでっ」
「…!」
話を続けてくれるとは思わなかったのだろうか、私がそう返すと俯いていた彼の顔は上を向き私と目が合う。
ーーあぁ、私の記憶にある彼の顔だ。
眩しくて、凛としていて、強い太陽のような眩しい顔。
ー夕焼け色だった空はいつしか星が出ていて、時間の流れはあっという間だと感じた
「ごめん、そろそろ戻らなくちゃ。」
「あ、そうだね、ごめんねこんな時間まで…」
「ううん、いいのっ、その…楽しかったから。」
「… うん、僕も」
彼といたら時間を忘れて、青空だった空はいつしか星が出ていて…同じ趣味の人だからだろうか?話してて心が弾んで、心なしかもっと一緒に居たいと思ってしまった。だがそういう訳にもいかずまた会おうと約束し彼は私の病室まで送ってくれた。
「…!やっといた、看護師さんから30分以内までと言われただろう?」
「あご、ごめんなさ_ 」
「違うんです、僕が悪いんです。」
「…え?」
「…って君は朔摩先生の?」
「はい、そうです」
「そうだったのか。まぁ、今回は発作も出てないし大丈夫だが発作が出たら危ないから約束は守るようにね?」
「は、はい…ありがとうございますっ」
「はは、若いっていいね」
「今度屋上行く時は1時間以内で、ね?」
「…!ありがとうございます!」
「よかったな」
ーーまた太陽のように眩しい笑顔を見せてくれる彼。
「さ、君はもう遅いから朔摩先生に挨拶してから帰りなさい」
「はい、失礼します。…じゃあねまた明日」
ーードキッ
不覚にも鼓動が音を立てた。『また明日』当たり前に明日も会ってくれるんだー。その言葉に私は喜びを隠せないでいた。返事を待っているのだろうか?なかなか帰ろうとしない彼に
「…うんっまた明日」
私が出来る精一杯の笑顔をキミに見せる。
じゃあねとまた手を振りそう言い彼と菅原先生は私の病室から姿を消した。そういえば、お互い名前言ってなかったな、明日は聞けるかな?と今更な疑問を自分にぶつける。でも『また明日』があるからいっか
だからだろうか…恋をする鼓動がうるさいのも
発作がおきた時いつも苦しすぎるのも
生きたいと思えるほど素敵な人に出会う私の心臓ー。
全てが新しい世界で、私は…ー。
「千歳、そろそろ行くけど準備できた?」
「お母さん…うん大丈夫だよ」
「もう発作おきたらダメだから、ドナー見つかるまでの入院よ…きっと千歳にはいいドナーが現れるわ。」
「…」
お母さんのその真っ直ぐとした期待と心配が痛い
「…うんそうだね」
「さ、行くわよ」
母の車に揺られること1時間半…この街で1番大きい瀬戸外病院へと向かい、そして病院へ着く。
「はい、はい…」
母と共に病院へとつきゆっくりする間もなく私1人待合室へと残し受付へと行ってしまった。受付の他にも説明や入院手続きなど色々済まさないといないので時間はかかるようで…。
「…どうしてこんなに弱くなったんだろ」
ふと私の声が待合室に溢れる。幸い私以外に目立ったお客さんは居ないから声は聞かれてないかもだけど、うっかり声をこぼしてしまった。そして母の受付長くなりそうだしな、とふと本棚を見ると私が今まで気になっていた小説の 夜明けて、目覚める死人 があった。これは前から買いたかった小説なのだが買えなくて、ここで読めるというのは嬉しい。
その本棚に近付き手を伸ばすとある人と手が重なった
「…!」
「…っ」
「あ、えっと…ごめんなさい。良かったらどうぞ」
「え?いやこちらこそごめん…僕はいいよ、君が読みな」
私の腕に巻かれている番号札を見て気を使って譲ってくれたのだろうか?その気遣いは嬉しいけどいらないと感じてしまう。
「え…でも」
「いいから」
「僕は大丈夫、家の近くに本屋あるし。」
「でも待ち時間退屈なんじゃ…?」
「ここにはお父さんの用事で来ただけだから、いいって。」
と、本を取り両手で私に差し出してくれる。
「…ありがとうございます」
「うんっ」
ーー太陽みたいな人だと思った、優しくて微かに触れた手が暖かくて…でも目は優しさと強さで燃える太陽。
「じゃあね」
と手を振り居なくなった彼、太陽…
まともにお礼すら言えてないのになぜそんなに眩しい笑顔で私に手を振ってくれたんだろう、また今度があるか分からないけど会えたら沢山お礼を言おう。
「…ありがとう」
私の声は彼にはもう届かないかもしれないけれど拙くも私は彼にお礼を告げる。
そうして小説を読み始めて数十分経った頃だろうか…クタクタのお母さんが受付カウンターから帰ってきて
「ごめんね、遅くなっちゃった…これ、入院証と面会カードね。今日は面会カード使わなくていいみたいだけど面会する時はこのカードがいるらしいからお父さんに言っとくわね。」
「ありがと、行こ」
「ええ」
そうしてお母さんと私二人で病院のエレベータを使い私の病室まで病室まで行き病室のドアを開けると私の主治医が居て
「椎名さん、お待ちしておりました。 話はお母さんから聞いているよ、今からが楽しいって時に入院なんて辛いよね、でも!僕が良くしてみせるから安心してねっ」
冗談っぽく笑い左腕をバシバシ叩く私の担当医ー 菅原先生は本当に私に良くしてくれた。
「ご迷惑をかけるようで申し訳ありません、娘のことを宜しくお願いします…」
ぺこりと頭を下げるお母さんを見て私も軽くお辞儀をする
「僕の方こそよろしくお願いします…一緒に頑張ろうね」
「はいっ」
ーそれから私の入院生活は始まった。消灯時間は早いし発作が出ないようにする薬も副作用で辛いしお風呂なんか毎日入れなくてあんなに艶があった私のボブヘアーは今はボサボサ… それでも頑張れたのはお母さんの期待と菅原先生の元気さとあの彼のあの日見た笑顔だった。
それから入院生活が始まって1週間後
「…じゃあお母さんもう帰るね、また明日も来るから」
「お母さん、もういいよ…?」
「…え?」
「仕事休んでまで来てくれるのは嬉しいけどドナー見つかるまでの入院だからどこか怪我して入院したわけじゃないの、…だからそんな頻繁に来なくて大丈夫」
「千歳…」
私の目の奥に悲しそうなホッとしたようなお母さんの顔が目に映る。お母さんは私の事心配しすぎなんだよ、最近寝れてないのもわかってる、目の下にクマができてるもん。
「私は大丈夫」
とびきりの笑顔とピースを見せた私は ね? とお母さんにかけた
「え、えぇ、そうね、千歳だもの、大丈夫よねきっと。ありがとう。じゃあ、また今度ね」
寂しそうに私に手を振るお母さん…これでよかったんだ。私のことよりも自分のことを心配して欲しいのに…。頭上にあるナースコールをポチッと押すー。そして少し時間があいて看護師さんが私の病室をノックし入ってくる。
「…気分転換に屋上行きます。」
無断で行ったらダメだとお母さんにこの間言われたのでナースコールを押し伝える、すると看護師さんは わかりました、でも30分以内ね と私に言う。久しぶりの外で久しぶりの青い空で鼻の奥にツンっとどこからか香る薬品の匂い。
「……」
「ドナー、見つかるかな」
個室からたまに見えるこの飛行機雲は私の心を凍てつかせる。雨が降ったり、曇りだったり、快晴だったり、空には色んな天気があって色んな日がある… けれど私の心は一方通行で、体調がいい日はそう何度も繰り返さない。だからこそこの青い空を見たとき弱音がこぼれた。
青い空に向かって零れた弱音は誰にも聞こえることなく澄んだ空気の中に息として混ざり消えた。
ーー何分いただろうか。青い空はやがて夕焼け色に染まり夕方を知らせる。空って不思議だなと思った。雲ひとつで時間がわかるようになっている、いやすごいのは人間か?この空を見ただけで夕方か分かるのだから…。
と、意味の無い考えを脳に張り巡らせる。
「あ、30分以内って言われてたんだった…」
今更ながらに思い出す約束をふっと消し病室に戻ろうとする私の手を引き寄せたある人ー。
「…っ、まって」
「え?」
「……この間ここに入院しているって見たから」
「う、うん?」
たしかにあの頃の私の腕には入院患者がつける番号札が私の腕にはあったけど今も入院している確証なんてないのにこの人はわざわざ私の元へ…?
「初めて見た時から思ってたんだ、君と仲良くしたいってね」
「…!」
「僕と同じ小説が好きな人は学校にも家族にもいなくて、…初めて見つけた同じ好みの人」
「あ、あの小説面白いよね。私大好きでっ」
「…!」
話を続けてくれるとは思わなかったのだろうか、私がそう返すと俯いていた彼の顔は上を向き私と目が合う。
ーーあぁ、私の記憶にある彼の顔だ。
眩しくて、凛としていて、強い太陽のような眩しい顔。
ー夕焼け色だった空はいつしか星が出ていて、時間の流れはあっという間だと感じた
「ごめん、そろそろ戻らなくちゃ。」
「あ、そうだね、ごめんねこんな時間まで…」
「ううん、いいのっ、その…楽しかったから。」
「… うん、僕も」
彼といたら時間を忘れて、青空だった空はいつしか星が出ていて…同じ趣味の人だからだろうか?話してて心が弾んで、心なしかもっと一緒に居たいと思ってしまった。だがそういう訳にもいかずまた会おうと約束し彼は私の病室まで送ってくれた。
「…!やっといた、看護師さんから30分以内までと言われただろう?」
「あご、ごめんなさ_ 」
「違うんです、僕が悪いんです。」
「…え?」
「…って君は朔摩先生の?」
「はい、そうです」
「そうだったのか。まぁ、今回は発作も出てないし大丈夫だが発作が出たら危ないから約束は守るようにね?」
「は、はい…ありがとうございますっ」
「はは、若いっていいね」
「今度屋上行く時は1時間以内で、ね?」
「…!ありがとうございます!」
「よかったな」
ーーまた太陽のように眩しい笑顔を見せてくれる彼。
「さ、君はもう遅いから朔摩先生に挨拶してから帰りなさい」
「はい、失礼します。…じゃあねまた明日」
ーードキッ
不覚にも鼓動が音を立てた。『また明日』当たり前に明日も会ってくれるんだー。その言葉に私は喜びを隠せないでいた。返事を待っているのだろうか?なかなか帰ろうとしない彼に
「…うんっまた明日」
私が出来る精一杯の笑顔をキミに見せる。
じゃあねとまた手を振りそう言い彼と菅原先生は私の病室から姿を消した。そういえば、お互い名前言ってなかったな、明日は聞けるかな?と今更な疑問を自分にぶつける。でも『また明日』があるからいっか

