風が冷たくなる頃に

ほどなくして、ナオが学食に現れた。

「遅いよ〜」
「ごめんごめん」

軽く謝って、ナオは席につく。
2人で交代しながら注文を済ませ、うどんをすすりながら話す。

「ねえ、どうしたらいいと思う?」
ナオは苦笑した。もう何度も聞かれている質問だ。

「何回も言うけどさ。そんなに悩むくらいなら、会えばいいじゃん。」
「でも……」
「ほらまた。あたしが“行くな”って言ったら行かないの?」
「どうだろ……」
「もう、自分で決めなよ。止めないし、勧めもしない。悩むくらいなら、行けばいい。それだけ。」

「……うん。ごめん。」

ナオはそれ以上何も言わず、再びうどんをすすった。
優しい音が、静かな時間を埋めた。

帰り道、サナはひとりで空を見上げた。
11月の風が冷たくて、思わず肩をすくめる。
――そういえば、彼、冬が好きだったな。
そんなことを、ふと考えてしまう。

メールの文面をもう一度思い出す。
あの4行に、どれだけの迷いと勇気が詰まっていたんだろう。
悩む彼の姿が、目に浮かんでしまう。
だから、サナは迷う。

もうすぐ3年。
忘れてしまってもおかしくない時間。
それでも――。