連絡をしてきたのは、高校時代の元恋人。
2年近く付き合って、そして別れた人。

理由は単純だった。
彼には、他に好きな人ができた。

「浮気」で片づけられるなら、まだ許せたかもしれない。
でも彼は本気だった。
だからこそ、サナは混乱した。

――じゃあ、あの2年はなんだったの?
――どうしてあんなに優しくしてくれたの?

その答えも、きっと単純だった。
彼は、サナのことも本気で好きだったのだ。
両方を本気で好きになってしまっただけ。

サナはそれをわかっていた。
わかっていたからこそ、許せなかった。
「このまま一緒にいたら、どちらも壊れてしまう」と気づいてしまったから。

結局、壊れたのは彼の方だった。

卒業後、彼がどうなったのか、サナは知らない。
人づてに「浪人して、大学に受かったらしい」と聞いたとき、
なぜか泣きそうになった。
――よかった、と心のどこかで思った。

彼が「壊れた」と聞いたとき、親友のナオは笑っていた。
「ざまあみろ」って顔で。
でもそれは、サナを思ってのことだった。
一方で、彼の親友はサナを恨んでいた。
何も言わなかったけど、サナは感じ取っていた。