「今日呼んだのは、他でもない(あい)の事なんだけど...」

私に向けられていた視線は、彼の隣りに座っている女の子に向けられた。

ズキンと胸の奥が痛むのを押さえつける。


申し訳なさそうな顔で伊吹さんの隣りに座っている彼女は、
外で噂をしていた子達とは違い、ほぼすっぴんで髪も黒くこの場所には似つかわしくない。

この場に似つかわしくないといったら、私の隣りに座る男も色白・眼鏡・髪色は黒で
伊吹さんに負けないぐらいの美麗で、なぜここにいるの?という感じだ。
(私は伊吹さんの方が何千倍もカッコいいと思うけど)


「愛がここ数日、学校で教科書や靴を隠されたりしてるみたいだけど、何か知らない?」

先程まで身に纏っていた温かな雰囲気が一変、ピリッとした空気になる。

「えっ?そんな事が、」

そんな事、初耳だ。
バッ、と隣りに座る男に顔を向ける。

男はこちらに視線を遣ることなく、真っ直ぐ向いたまま。


まただ…。
また何も教えて貰えなかった。