軽く3回ノックをすると、ガチャっと扉が開いた。
「あっ、」
「…はぁ」
扉を開いた男は私の顔を見るなり小さく溜め息をつき、無言で部屋の中へ戻っていった。
取り付く島もないって感じ。
私だって、来たくて来てる訳じゃない。
部屋の奥へ進むと、大きな革張りのソファーに2人座っており、その向かいに一人掛けソファーが数個置かれている。
私の前を歩く男が一人掛けソファーに座ったのを見て、私もその男の隣りのソファーへと腰を掛け、
下にあった視線をあの人、伊吹さんへと向けた。
「今日はごめんね、来てもらって」
伊吹さんの優しい声が私に向けられる。
「い、いえっ」
幾度となく伊吹さんと話したことがあるが、毎回緊張してしまう。
眉目秀麗という言葉は、伊吹さんの為にある言葉だといっても過言ではない。
「ここに来るのは久しぶりだよね?」
「は、はいっ」
「伊吹、雑談はいいから早く本題に」
私と伊吹さんの会話を両断する隣りの男。
私はこの男を末代まで呪うことにした。
ごめん、ごめんと笑いながら謝る伊吹さん。
この姿を見れたので呪うのは今世だけにしとこう。


