先輩…、この学校に友達いるんだ。
私やあの子と同じく、友達ゼロかと思ってた。

軽くショックを受けつつ、靴箱で上履きに履き替えた後は
あの子の靴箱へと向かう。

伊吹さんから直接、問題を解決するように言われたのでね。


あの子の上履きや靴がない。

あ、そっか。
上履きは隠されたと言ってたから、元々無いのか。
ってことは、あの子はまだ来てないという事ね…。

ふと、靴箱の中にA4サイズの紙がグシャグシャになって入っているのを見つけた。

その紙を手に取り広げると。

はぁ、と小さい溜め息をつき、あの子の教室へと向かう。


あった、あった。
1年生のあの子の教室を見つけ、足を踏み入れる。

ヘッドホンを外し、出入口付近にいた野球部の様な男の子に声を掛けた。

「急にごめんね、三上愛さんの机ってどこかな?」

「あ、一番端の列で、後ろから4番目です、」

辿々しく答える男の子にありがとー、とお礼を言い、
あの子の机へと歩みを進めた。


私の想像しているものが正しければ、事態は深刻である。

意を決して、あの子の机の中に入っている教科書を机の上に出すと。
黒のペンで大きく『ブス』『学校に来んな』など書かれていた。

手に持っていたA4の紙を一緒に並べる。

A4の紙には『いつ退学するの?みんな退学するの待ってるよ!』という言葉が書かれている。

パッと視線を教室に遣ると、先程まで騒がしかったのが嘘の様に静まり返っており、私の方に視線が集中していた。

その視線にニコッと微笑み返し、ヘッドホンを付けて
教科書を机の中に戻して教室を後にした。

A4の紙も置いてくればよかったのに、握りながら自分の教室まで持ってきてしまった事に気付いたのは、
自分の席に座った後だった。