「まだそんなことを言っているんだね。君は嫉妬の余り、ユイナに数々の嫌がらせをした挙げ句、彼女の飲み物に毒を入れたんだぞ」
「そんなこと、私……」

 うわぁ。よりによって毒殺だなんて。
 このままじゃ、断罪ルートまっしぐらじゃないの。
 
 さっき死んで、アーシェになったばかりで、また死ぬの?
 もう回避ルートとかないのかな。

「してない。信じて下さい、殿下」
「したんだよ。罪を認めなければ、どうなるか分かるな」

 スルリと殿下の手が私にのびてくる。
 綺麗な汚れを知らなさそうなその手は、そのまま私の首を掴む。
 自分でも、体がガタガタと震えるのが分かった。

「これが最後だよ。分かるね? アーシェ、君は僕を愛する余り、嫉妬に狂いユイナの飲み物に毒を入れた。さぁ、言うんだ」
「私……は、殿下を愛する余り……」
「殿下ではないと、前にも言ったはずだ。ルドルフ、ルドと呼べと」
「ルド様」
「そうだ、いい子だ。続けて」

 怖くて怖くて、涙が溢れてくる。
 しかし、殿下、ルドはそんな私を満足そうに見つめていた。

「私はルド様を愛する余り、嫉妬に狂い彼女の飲み物に毒を入れました」

 罪を認めてしまった。やったのか、やってないのかも分からない罪を。

 でも、こうするより他に命が助かる道はなさそうだった。
 断罪ルートが回避できないのならば、せめて追放にして欲しい。痛いのは嫌だ。

 私が言い終えると、彼はうれしさを隠せないようだった。

 その顔を見ると、私は選択を間違えてしまった気がする。
 最後まで違うと言い続けた方が良かったのではないかという不安が、胸を締め付ける。

「くっくっくっくっく」

 下を向き、ルドは笑い出した。
 そして私の首にかけた手を、そのまま頬に添える。