「ここ、どこ?」

 カツンカツンという重い鎧を着た人の足音だけが、この空間に響いていた。
 息を吸い込むと、むせそうになるほどのカビ臭さと湿気が充満している。

 むき出しの床はどこまでも冷たく、鎖に繋がれた腕も、すでに感覚がない。

 牢の前に吊るされたランプだけは辺りを照らしていて、自分の周り以外、どこまでこの空間が広がっているのかも、想像はつかなかった。
 時折聞こえて来る、他の囚人のうめき声に、もう私の気力も限界だった。

 どうしてこんなことになったのか。
 そもそも、どうしてここにいるのかすら、私には分からない。
 さっきまで、四連勤になる夜勤をしていたはずだった。

 私は社畜だった。

 シフトに穴が空けば進んで夜勤に入り、仮眠の後に日勤をして、また夜勤に入るというのを繰り返していた。
 人と関わる仕事が好きだったし、倒れた仲間の代わりにするという使命感にも燃えていたからだ。

 それなのに、仮眠から覚めたらこの牢の中にいたのだ。
 しかも、見回りに来た兵士らしき人は明らかに私が知っている世界の人間ではない。

「うん……。死んだんだね、私……。でも、仕事頑張ってたんだよ。それなのに、これはさすがになくない?」

 転生という類いだろう。

 夜勤の休憩の時によくやっていたゲームの世界もこんな感じだった。そこまではいい。
 いや、良くはないけど、死んでしまうとはナサケナイから、仕方ない。ただ、この状況はないでしょう。