ー 10年後 ー
あれから10年後、まだ恩妙寺は帰ってこない。
もう恩妙寺は帰ってこないのか。
恩妙寺が日本に帰ってくることを諦めた私は、恩妙寺を忘れようと、恋人を作り、ついに今日は結婚式。
「それでは、新婦の登場です。」
「…恩妙寺」
つい、声に出てしまった。
「ん?みゆき、何か言ったか?」
「ううん、なんでもない。」
「そうか、ウェディングドレスが世界一似合ってる。」
その時
ー ガチャっ ー
式場のドアが開いた。
「チョマテヨ!!」
ドアの前にいたのは、恩妙寺だった。
「恩妙寺!!!!」
「みゆき!あれから10年、オレはやっと美味しいピーナッツバターを作る事ができた!だから迎えに来た!!」
「恩妙寺!」
その瞬間、恩妙寺は私の手を掴んで、式場から飛び逃げた。
もちろん、相手のちょっと意地悪だったお母様は気を失い、ウェディングプランナーさんや、式場にいる人は私達を追いかけてきた。
私がウェディングドレスを着ているせいか、通りすがる人々が私たちを2度見する。
人通りの少ないところに来たところで私たちは止まった。
「もう追って来ないでしょ…ハァ、ハァ…」
その時、私は恩妙寺が何かをポケットに入れているのを見た。
「恩妙寺…それ…なに?」
「あ、そうだ!コレはね」
恩妙寺がポケットに手を入れて瓶のような物を優しく取り出した。
その瓶のラベルには、イギリス語が書いてあった。中にはなめらかなペースト状の優しいピーナッツカラーの美味しそうな物が入っていた。
「みゆき、オレ、イギリスでピーナッツバターの修行して、自分でピーナッツバターの会社立てて、頑張ったよ。」
「コレは、オレが1から立てたピーナッツバターの会社のイチオシの商品。コクがあって上手いんだ。コレはまだ売っていないから世界中の誰もまだ食べていない。みゆきに1番に食べて欲しいんだ。」
「恩妙寺…!!」
「オレはここまで自分の手で頑張ったから迎えに来た!!」
「だから、どうかオレのピーナッツバターを毎朝パンに塗って下さい!!!」
この言葉は私にとって、何より大切で、誰よりも恩妙寺に言って欲しかった言葉だった。
私は思わず涙した。
「私こそ!恩妙寺が作ってくれたピーナッツバターを毎朝パンに塗りたい!!!お願いします!!」



