『お姉ちゃんも恋人作りなよ〜!私、お姉ちゃんを絶対幸せにしてくれる人知ってる!』
『はいはい。私のことはいいから、撮影の準備をしなさい』
『むぅ……』
『夏木くんを困らせないようにね』
身体があまり強くない輝のための、救急セット。
それをいつも夏木くんに預けるのが、燈の役目。
長期撮影の度、彼は輝の体調を毎度気にして、朝と夜に報告メールを写真付きでくれていた。
だから信用していたし、彼と幸せになって欲しかった。
あの子の花嫁姿を見たくて、
自分のことなんてどうでも良くて。
『っ、絶対、輝を幸せにするからっ……お父さん、お母さん、心配しないで』
墓前に誓った、あの日を今も忘れない。
あの子が泣くから、燈は泣くことが出来た。
大丈夫と言いながら、あの子がいてくれたから。
……なのに、あの子を失った。
「…………東雲さん」
「はい」
少し赤くなった瞳。輝を、大切にしてくれた人。
『本当に素敵な人なんだよ!私の自慢の親友!』
……あの子の、自慢の親友。
「……私は、水無瀬輝じゃありません」
「はい」
「水無瀬燈で、輝の双子の姉で……」
「存じています」
これから先、あの子が居なくなった世界でどう生きていけば良いか分からなかった。
「私、これから、やることがないんです」
普通の就職は望めない。
“ひかり”として、表舞台に立ってしまったから。
もうしばらくは。
「……それでも」
気持ちに応えられない。
だって、誰かを好きになったことがないから。
輝が1番。輝が全て。燈には、輝だけだったから。
「私にはもう、何も無いですけど……」
導が欲しかった。
この世界で死なずに、生きていく導が。
「それでもいいですか」
本当は、とても怖くて。
天涯孤独の燈は、輝を亡くして、ずっと宙ぶらりん。
『どうか、貴女の好きに生きてください。俺はずっと、死ぬまで、輝の婚約者で、貴女の義弟でいたいです。貴女が望むならば、何でもします。なのでどうか』
……何度も死のうとした、引きこもり期間。
繰り返し、言葉を尽くしてくれた夏木くん。
「もちろん」
差し出された手を、再び取った。
その瞬間、地に足がついたような。
「……っ、」
喉が震えて、息苦しくなった。
唇が震えて、声が漏れた。
涙が溢れて、唇を噛んだ。
「……噛まないで」
彼の長い指が、燈の唇に触れる。
そのまま、後頭部を抱き寄せられて。
彼の温かい胸で暫く、燈は子供のように泣きじゃくった。


