「『もうすぐ死ぬ』と笑う姿に、俺はなんて返せば良いか分からなかった。死というものを軽んじる人ではないことは分かっていたから、尚更。……寂しい、なんて、それ以外に言えたことは、沢山あっただろうに」
そう言って、片手で顔を覆う彼。
震える肩は、彼の優しさを表していた。
「…………でも、輝は笑ったんじゃありませんか」
何とか振り絞って出た言葉は、そんなこと。
「あの子は多分、貴方の答えに満足したと思います」
輝の性格上、彼の返しは100点だったと思う。
そんな燈の言葉に、彼は小さく頷いて。
「それでも。……それでも、冗談であって欲しかった」
そんなのは勿論、燈もだ。
どうして、あんなに可愛い子が。どうして、どうして。
何度も何度も繰り返し、何度も何度も世界を恨んだ。
終わらせられない苦しみに、今も胸は痛いまま。
「……あの子ほど、嘘が苦手な子はいません」
「そうですね。明るく振舞って、いつも場を盛り上げてくれました。本当にお姉さんが大好きで、俺の悩みも、いつも真面目に相談に乗ってくれる優しい、親友でした」
燈は、泣いてしまった。
ボロボロと涙がこぼれて、止まらなかった。
「昔、俺は貴女に救われました。貴女が初恋です」
顔を覆って泣き出した燈の横に立った彼は、穏やかな声で話し出す。
「初対面で、貴女にアイスを貰いました。あの日があったから、俺は今も芸能界にいます。……そして、貴女を忘れられなかったある日、輝に出逢いました」
彼は優しい声で、輝の話をしてくれた。
芸能界での様子。
家では分からない、彼女の話。
「失礼なことを言っているのは、理解しています。俺のことは好きじゃなくてもいいです。でも、貴女のそばにいたいんです」
「……っ」
「輝との約束やお願いを守るためじゃありません。貴女が初恋で、数年ぶりに見た貴女に一目惚れしたことも嘘ではありません。本当に応えてくれなくていいです。応えてくれなくていいので、そばにいさせてくれませんか」
─……輝の馬鹿。
私の泣く場所に、なんて、そんなの。
最期まで、私を心配して。
本当は死ぬのが怖くて、恋人の前で泣いていたくせに。


