「─着きました」
車で大体、20分くらい。
降りた先、空気が良い山の中。
彼は車の後部座席から綺麗な花を取り出すと、
「すみません。初めてで此処へ連れてきて」
と、目を細めた。
「い、いえ……」
まだ、墓地だ。
輝じゃないかもしれない。
だって、ここには多くの人が眠っていて。
判断するには早いって、そう思うのに。
─彼の後をついて歩いた先、到着したのは。
「─約束通り、会いに来たよ」
輝の、眠る場所。お父さんとお母さんと眠る場所。
「っ、ど、どうして」
動揺が隠せない。
いやそれより、やっぱり、彼は気づいていた。
「わ、私は」
手が震える。騙すつもりはなかった。
ううん、そんなことより、どうしてここを知っているの。
「……1度だけ」
彼から少し離れる。
刻まれた【水無瀬家】の墓を守れるのは、もう燈だけ。
「え?」
震えて、墓石から離れる燈を他所に、彼は墓前にしゃがみこんで、花を入れ替える。
少し枯れ始めていた花は、彼の手によって入れ替えられ、花が大好きだったお母さんと輝は喜ぶだろうな、なんて、頭でぼんやり考えて。
彼は燈に背を向けたまま、話し出す。
「1度だけ、彼女と彼女の恋人と訪れたことがあったんです」
「……」
「御両親が眠られている場所だと言いながら、彼女は手を合わせていました。同時に、ここを守る姉を一人にしたくないから、彼女の恋人は婿入りするのだと」
輝は、全てを話していたのか。
彼は、全てを知っていて、分かっていて。
「─冗談であって欲しかった」
振り返った彼は、泣いていた。
彼の視線の先には、墓誌があって。
そこには両親の名前に並んで、妹の名前が刻まれている。


