「─……皆は、大切な人を喪った時、どうやって乗り越えるんですか」
「「「「……」」」」
場が静まり返った。
抱きしめる権利が欲しかった。
寄り添う権利が欲しかった。
誰も前でも泣かない君が、泣ける場所になりたくて。
─そんなの、ほぼ初対面の自分には難しいと頭ではわかっているのに、口から零れた“取引”の。
「……すみません。俺、多分、彼女にとても失礼なことをしています。でもどうか、見守ってくれませんか」
家族が動けば、望めば、彼女の行方なんて知れる。
蒼依の友人である彼女はもう、きっとどこにもいない。
きっと、彼女は怒るだろう。
『意気地無し!蒼依のバカ!』って。
そんな声が頭の中で再生できるのに、君は。
─君はもう、きっと二度と直接は怒ってくれない。
「……ごめんなさい」
良い年齢を迎えた大人が、泣き言ばかり。
続く失態に、弱る心。
俯いた蒼依に何かを言うまでもなく、家族は寄り添って、背中を撫でてくれた。


