『タラシ過ぎてやだ〜!あんたがお姉ちゃんの初恋奪ったの、許せない〜!』
あまりにも不名誉な肩書き。そして、まだ昼前とは思えないテンションの高さ。
『……初恋』
『あっ、ちょっと顔を染めないでよ!お姉ちゃんはあげないんだから!』
─それが彼女、ひかりとのはじまり。
再会といえば良いのか、初めまして、に、カウントするべきなのかはわからないが、くるくる表情を変え、心から演技を楽しんでいた彼女は蒼依にとって、何でも話せる友人だった。
そんな彼女が、消えた。
─『今の蒼依になら、お姉ちゃん託せるや』なんて笑いながら話したのが、最期。
次に目の前に現れた彼女は、彼女ではなく。
皆に囲まれて笑っているのに、
そこにいるのは“ひかり”なのに、彼女だ。
『私、多分、もうすぐ死ぬから』
軽くそう言っていた親友に、蒼依は何も言えなかった。
ただ一言、『それは……寂しいね』なんて。
そんなつまらないことしか言えなかった。
なのに、彼女は笑って。
『私、貴方のそういうとこ、本当に好き〜!あ、LoveじゃなくてLikeよ。私には最高の彼氏がいるからね!』
親指グッと立て、幸せそうな彼女。
今目の前にいるのは、今にも泣き出してしまいそうな。
そばにいたい。抱きしめてあげたい。
『……両親が死んだ時ですら、泣くのは私の役目。縋り付くのも私の役目。私が欲しいって言えば、お姉ちゃんは何でも差し出した。涙すら呑み込んで、微笑んだ。私は泣きながら、そんなお姉ちゃんに抱きついたよ。─……ねぇ、蒼依、蒼依は、私の代わりに、お姉ちゃんの泣き場所になってあげてよ』
次々と頭に浮かび上がる、彼女との記憶。
親友とも呼べた彼女がこの世界にいないのだと実感する度、泣きそうになった。
でも、彼女はまだ目の前にいて、蒼依はそれに気付いてはいけなくて、だから。


