だから。
『─ねぇ、東雲蒼依』
ある日、目の前に現れた緩いツインテールの可愛らしい雰囲気の女の子。
白いワンピース、あちこちに小さなリボン、大きな瞳は蒼依を捉え、そんな可愛らしい雰囲気に反して、顎で外を指した彼女は半グレのよう……。
『私を、覚えてる?』
可愛らしい容姿、雰囲気、声……恐らく、今話題の“ひかり”。
SNSで人気だった彼女はある日、街中でショッピング中にスカウトされ、芸能界デビューした。
『えっと……ひかり、さん』
『そう。最近、デビューしたの。貴方を見つけた瞬間、びっくりした。あなた、私のお姉ちゃんに救われたことがあるでしょう』
彼女はそう言うと、髪の毛を解いた。
そして、軽く方に流すように整えて。
『……あ』
『思い出した?─私が1番だったお姉ちゃんが、私が寝込んだあの日、お父さんとお母さんに貴方の話をするの。貴方を見かけて、お姉ちゃんが私から目を逸らす度、私、あなたを嫌いになった!』
『……』
なんて反応していいのか分からず、蒼依は無言になる。
『もうっ、なんか言いなさいよ!』
『あ、えっと……元気そうでなにより?』
記憶を思い出した今、“静”だと思っていた彼女の嵐のような捲し立てに、蒼依はついていけない。
『何なのよ!』
『(こっちの台詞だけど)女優が、そんなに声を荒らげるものじゃないよ。喉を傷める。何より、身体冷えてない?女性の身体を冷やすのはダメだと、聞いたのだけど』
蒼依がそう言いながら、自分の上着を肩にかける。
すると、本当は寒かったのか、最初は拒絶しようとして一転、彼女は深いため息をついた。


