夢を見ていた。
 ふわふわと温かく、柔らかな夢。

 内容は覚えていないのだけど、そこには私が幼い頃に亡くなった母もいた気がする。

 そしてそこにいた誰かは、私に温かい言葉と祝福を述べていた。

『今度こそ、自分で選んだ道を――』

 確かにそんな言葉だった気がする。

 でも今度なんてあるのだろうか。
 生まれ変わるってどんな気分なのかしら。

 少なくとも、私という人間はいなくなるってことよね。
 だけど幸せになれるなら、それもいいかもしれない。
 いいことなんて、何一つなかったから。

 男でも女でも、何でもいいわ。
 自分で自分の道が選べて、誰かに愛されさえすれば。

 どこまでも温かな光が、降り注いでいる。
 あれだけ冷たかった雨も、川の水も何も感じない。
 
 たったそれだけのことで、どこか心が満たされていく気がした。