白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。

 しばらく歩くと、玄関先に見なれない馬車が横付けされている。

 この屋敷には似つかわしくはない、白く大きな馬車。
 白に水色の細工が施され、中には高そうな皮で座椅子が造られていた。

 ずいぶんと高そうな馬車だけど、どこかの貴族様が遊びに来ているのかしら。

 それにしてもこれ一台で、相当な金額よね。
 だってこの家に置かれている馬車の比ではないし。

 挙式の後に夫と乗った男爵家の馬車は、辻馬車(つじばしゃ)かと思えるほど質素(しっそ)だった。

 革張りすらされていない座席は木のままで、何もしいていないから腰が痛くなったのよね。

 あれなら、実家にある中古の馬車のがいくらかマシだと思えた。

 にしても、だ。
 
 この馬車は、明らかにこの屋敷にはにつかわしくない。

 だって元よりお金持ちが集まるような感じではないし、屋敷主催のパーティーもやらないって言ったくらいなのよ。

 つまりはお友だちもいないってことじゃない?

 そういえば、前の三年間でダミアンの友だちだなんて人が訪ねてきたことは一度もなかったわね。

 ああでも、義母には誰かお客様がきていたって教えてもらったことはあったけど。

 でもあの時は興味もなかったし、言いつけられた仕事をこなすので精一杯だったから、そのお相手を見たことはなかったのよね。

「奥様、ぼーっとしてないで急いで下さい!」
「ああ、うん。すぐ行くわ」

 おそらくミーアが急かす先に、この馬車の持ち主がいるはず。
 初の義母とのお友だちか何かとのご対面ね。

 私はやや気もそぞろになりながら、小走りで屋敷に入って行った。