本邸にいる侍女とは、制服も何もかも違う。

 きちんとした身なりだった。
 ややふくよかであり堂々とするその様は、古くからこの屋敷に勤めていそうな人に思える。

 のぞきが彼女に見つかったのは誤算だったけど、ある意味好機かもしれないわね。
 
 ここで古くから支えている人間の話は、絶対に役に立つもの。
 何とかして彼女から情報を引き出さなきゃ。

 私はあくまで新人の侍女を装いつつ、おどおどとした感じで彼女に話しかけた。

「す、すみません。奥様に頼まれて、お庭の掃除をしようと思っていたのですが、掃除用具の倉庫がどこにあるのか分からなくて……」
「奥様? 掃除用具って、あなた……」

 腰に手をあて、キツい赤茶色の目をさらに吊り上げる侍女。
 かなり怪しんでいるようね。

 まぁ、見たこともない侍女がこの離れに近づいてきているんだから、それもそうか。

 ある意味この人は忠実(ちゅうじつ)な人なのかもね。
 でもこっちだって、バレるわけにはいかないのよ。

「本邸にいらっしゃる奥様です……。その……大奥様より、掃除を奥様もするように申し使っていて。私たちはその手伝いなのです」
「ああ、大奥様のご命令なのね」
「はい、そうなんです。奥様にはこの家のためによく働くように、とのことだそうです」

「それで侍女までかり出しているの?」
「奥様一人ではどうにもならないとのことで、私たちはご実家より手伝いに来ているのです」

 さも興味なさそうに、『ふーん』とだけ彼女はもらした。