「いいのですか? いくらなんでもそれは……」
「いいのよ、そっちの方が好都合だし。それに何とも思ってない人間に、どう思われれたって、私は傷つくこともないわ」

 悩んで悲しかった過去の私は、あの川の底に捨ててきた。

 だから大丈夫。
 むしろこちらの目的のためになら、好都合よ。

「アンリエッタ様が良いのでしたら、あたしたちはそれでいいのですが」

 ミーアはそう言いながら顔を曇らせた。
 
「私のことを案じてくれるのは、みんなだけよ。本当にありがとう。頑張りましょうね」
「アンリエッタ様……」

 使用人という立場を差し置いても、私たちの境遇は良く似ている。
 ここに集めた子たちは皆、父によって買われてきた子たちだから。

 でもだからこそ、私たちは同じ目標に向かって進んで行ける。
 望みは同じ。私たちは私たちの人生を、自分たちの手で取り戻すの。

「私たちの未来のために、頑張りましょう?」
「「はい」」

 私たちはそれぞれ決めた持ち場に向かって歩き出した。