だけど今、父に抵抗するのは得策(とくさく)ではないのよね。
 そんなことをしたらミーアやこの使用人君にも迷惑がかかってしまう。

 そう考えると、反旗(はんき)(ひるがえ)すのは結婚してからか。
 あの人の目がない方が、いろいろとやりやすいものね。

 結婚は一ミリも乗り気ではないけど、ここは仕方ないわね。

 それに夫や義母たちにも、散々な目に合わされてきたんだもの。
 少しくらいやり返してやらないと、こっちの気が済まないわ。

「ちょっと言ってみただけよ。ちゃんと今から向かうから安心して」

 微笑んで見せると二人は、ほっと胸を撫でおろす。
 
「ミーア、あとで話があるから夜、私の部屋に来てくれないかしら」
「ええ、構いませんよ。では夕食のあとにお伺いしますね」
「疲れているのに悪いわね。じゃあ、執務室へ行ってくるわ」

 ひらひらと手を振りながら、私はいつもよりゆっくりとした足取りで、作業場を後にした。
 心配そうに見つめるミーアたちを気にすることもなく。