作業場の奥に作られた、簡素(かんそ)な休憩所。
 私たち従業員は、いつもここで交代で休んでいたのだ。

 もちろんサボっているわけではない。

 許されたほんのわずかな時間だけ、ただ交代で体を休ませ仮眠を取る。

 そうでもしないと、父が言いつけた仕事は多岐にわたり、倒れてしまうから。
 朝から晩まで、それも毎日。
 ほぼ休みなく私たちは働かされていた。
 
 ここに集められた使用人や従業員は、他に行くあてがない者たちばかりだから。
 父はそこに付けこんで、タダ同然でこき使っているのだ。

「どういうこと? なんで、私生きているの……」
「本当にどうしちゃったんですか、お嬢様。さっき少し休憩するって寝ちゃってから変ですよ。悪夢でも見たんですか?」
「寝てた? 私が? あれが全部夢だったっていうの?」

 夢なんて思えないほどよ。
 だって、ただ寝ただけでそんな何年分の人生の夢なんてみないでしょう、普通。

 もう一体、何がどうなってるの。
 意味が分からないわ。
 
「よほど変な夢を見られたんですね。かわいそうに。今日はかなり作業多かったですもんね。あんなに倒れるように寝ちゃうお嬢様なんて、初めて見ましたよ」

 少なくとも、ミーアが嘘を言っている感じはしない。

 でもどうして?
 死んだのではないというなら、これはどういうことなのかしら。

 バラ病もなくて、ミーアも生きている。
 しかも私が実家でまだ働いてるってことは、結婚もしていないってことよね。

 もしかして!