「ホント、海香子ちゃんの言う通り、僕の絵を買ってくれる人は、誰も週刊誌なんか見てなかった。仕事の関係者さえ『結婚したんだ?驚いたよ、おめでとう!』という調子だしね。僕の自意識過剰ってやつかな」

苦笑いで清海さんは言う。

「自意識過剰というか、私のことを心配してくれたからじゃない。でもね、私もなんだかんだで、このスローライフが守られてよかったと思ってる」

「バリバリのキャリアウーマンへの憧れは、もういいの?」

そう聞かれると、22歳という年齢で諦めてしまうのは、果たしてどうなのかと思うし、正直、今でも地元にはあまり帰りたくはなく、昔の友達とも疎遠のままだ。

仕事で頑張ることをやめ、玉の輿にのったような負い目もあるから。

そんな胸の内を察したかのように、

「永久就職したこと、後悔してる?」

そう尋ねられると、反射的に、

「そんなこと、あるわけないじゃない!」