「嘘とは思わなかったけど、社交辞令だとは思ってました⋯⋯」

「まぁ、そう思われても仕方ないか。でも、また来たかったんだよ。この町やお父さんの顔剃りもいいけど⋯⋯それ以上に、純粋な人魚姫に会いたくて」

「人魚姫?」

「あ、まだ名前を聞いてなかったね。僕は、高丘清海って言うんだけど、君は?」

「浜田海香子です。海の香りの子って書くんですけど⋯⋯」

「へぇ、まさにイメージ通りだね。因みに、僕の清海って名前も、清い海って書くんだよ。自分で清いなんて言うと、ちょっと恥ずかしいけどね」

「そんなことありません!素敵な名前ですよ」

清海さんは、優しく微笑むと、

「今日も磯遊びするんでしょ?僕も釣りに来たから、一緒に行かない?」

「はい!」

嬉しい⋯⋯また会えるなんて思わなかったから。


清海さんは釣り糸を垂らし、私は箱メガネを覗きながら、二人していろんなことを話した。