それはやはり、今もまだ、心のどこかで、都落ちしたことを恥じているから⋯⋯。

大好きな清海さんが、何も恥じることなどないと言ってくれたからといって、ハイわかりましたと、気持ちを切り替えられるほど、人の心というものは単純ではない。

いつかは、乗り越えるべき壁なのだろうけれど、お盆にも敢えて帰省しなかった。

晩夏の今になって、ようやく初めて帰省するわけだが、何とも変な感じがする。

この歳まで、ちゃんと誰かと付き合ったこともないので、当然だが、恋人を親に紹介するのも初めてのことだ。

こんなに素敵な人であろうと、相手が親となると、何だか気恥ずかしい⋯⋯。


約束の日、車を運転する清海さんは、車中では暑いからスーツの上着を脱いでいるが、やけに真剣な表情だ。

「なんか⋯⋯緊張するね」

私が言うと、清海さんは、

「多分、僕のほうが遥かに緊張してるよ」

そう言って笑った。