清海さんは、相変わらず、晴れた昼間にはあまり絵を描かずに、夜や天気の悪い日に集中している。

芸術家の頭の中はわからないとはいえ、その気になれない時に描いたとしても、よい作品は出来ないのだろう。

天気の良い日中は、いつものように、すぐ目の前の岩場で、二人してのんびり過ごしたり、一緒に買い出しに出かけたり、デートで仙台まで行ったりもした。

「仙台って、結構、カップルが堂々とくっついて歩いてるよね⋯⋯」

私が見たままの感想を言うと、グイッと肩を抱き寄せられた。

「たまには、こうして恋人たちに紛れてみるのもいいんじゃない?」

清海さんはそう言う。

人目のあるところで、こんな風にべったりするのは初めてだったので、少し戸惑ったが⋯⋯。

しかし、すれ違う人の誰も、私たちのことなど知らないし、他の恋人たちは二人の世界に入り込んでいると判ったら、ふっと開放的な気分になれた。