お兄さんは、帰りしな、

「また来るよ。なんだか気に入っちゃったから。この海辺の雰囲気も、お父さんの顔剃りも最高だった」

目映い笑顔でそう言ってくれるけれど、きっともう二度と来ないだろうな⋯⋯。

そう思いつつも、

「ええ。またいつでも遊びに来てくださいね」

彼の車が遠くに去っていくのを見て、何となく淋しく感じた。

変なの。

初対面の人で、名前も年齢も知らなければ、デザイン関係の仕事をしている⋯⋯それしか情報はないのに。

自分は特に面食いではないつもりだったが、本当に端正な顔立ちの人だった。

いやいや!

もう、二度と会うこともない人のことより、私は自分の人生をもっと真剣に考えなければ。