「ううん。磯釣りにいらしてたけど、よりによって釣れない場所だったから、穴場を教えたの。そのお礼がしたいっておっしゃったら」

「へぇ、それは有難いね。さあ、どうぞどうぞ!」

おしゃべり好きな父が、あれこれお兄さんに尋ねているのを、私は手伝いながら聞いていた。

彼は、デザイン関係の仕事をしているとのことで、さっきも言っていたように、東京と山形を行ったり来たり。

「この子もね、東京でOLやってたんですよ。貿易関係の」

父がそう言うので、

「お父さん、その話は⋯⋯」

私が止めると、おお、すまん、と、それ以上は話さずに居てくれた。

「きみ、社会人だったの!?てっきり、まだ10代なのかと思ってたよ」

「えー⋯⋯そんなに子供っぽいですか?」

「いやいや、無邪気で可愛らしいから」

うまいこと誤魔化すものだ。


伸びていた髪を切って、顔も剃ると、お兄さんは一段と男前になった。