王子になれば、人魚姫とは結ばれないどころか、あまりに残酷だ。

では、何になりたいのか?

やはり、それはわからない。

海香子ちゃんのことを、成人女性でよかったと思っていたくせに矛盾しているが⋯⋯。

黒いビニール袋の中身を見た時、それまでずっと、童話の世界のふわっとしたお姫様だと思っていた彼女を、急に生身の大人の女性だと意識し、かなり焦った。

自分でも、どうかしていると思う。

僕は、彼女に御伽話のお姫様を夢見たのか?

それもまた違う。

本当は、判っていたはずなのに。

彼女が高校生でなくてよかった、ロリコンにはなりたくないから⋯⋯と思うのも、恐らく、最初から彼女を一人の女性として意識していたからだろう。

海香子ちゃんが来てくれてから、2週間が過ぎた。

相変わらず、僕らは友達のような、兄妹のような⋯⋯そんな調子で一緒に居る。

言わずもがな、一度だって過ちなどない。