甘い生活  Casa al mare

「うん、余裕だよ。海香子ちゃんも、好きなものを好きなだけ食べてね」

「ありがとう」

会計のあと、荷物を持とうとしたところ、さり気なく清海さんが全部持って行く。

「清海さん、重たいでしょう?」

「ん?平気だよ」

「私、アシスタントなんだから、荷物ぐらい持つ!」

「まだ今日は仕事じゃないから、いいのいいの」

後部座席に荷物を置くと、家に向かって車を走らせる清海さん。

覆面画家だとか、あの難解な絵のイメージから、きっと世の中の人は、高丘清海という人を、繊細かつ神経質で、意味不明な思考回路なのだろうと想像するかもしれない。

しかし、実際の清海さんという人は、ルックスのよさや才能を鼻にかけることもなく、意外と豪快で庶民的で、親しみやすい好青年といった雰囲気のお兄さんだ。

「ふふ⋯⋯職業が画家のくせに、繊細じゃないって思った?」

それに近いことを思っていたので、焦った。