全然神経質ではないと思うけれど、芸術家の頭の中は、私のような凡人には理解出来ない。

しかし、理解は出来なくても、彼の優しさなら、もう既に知っている。

「では⋯⋯ふつつかな娘ですが、よろしくお願い致します」

まるで、私を嫁にでもやるかのように両親が頭を下げ、

「責任をもって、大切なお嬢さんをお預かり致します」

3人とも頭を下げているので、私も倣って頭を下げる。


翌日にはもう、荷造りは済ませておいた。

清海さんが軽トラを借りて迎えに来てくれたので、荷物を載せ、私は助手席に乗り込む。

「海香子ちゃん、決心してくれてありがとう」

「そんな⋯⋯!お礼を言うのは私のほうよ」

「じゃあ、行こうか」

他愛ないことを話しながら、海沿いの国道を走る。

チラリと、清海さんの横顔を盗み見ると、格好いい人は、運転しているのが軽トラでも、サマになるんだな⋯⋯と思う。