翌週、清海さんはまた来てくれたので、

「こんな私ですが、どうぞ宜しくお願い致します」

深々と頭を下げると、

「ちょっとちょっと!やめてくれよ、そんな他人行儀なのは」

「だって、これからは私のボスになるわけですし」

「あのねぇ⋯⋯仕事といっても、会社じゃないんだから。あんまりかしこまらないで?あと、敬語もやめて」

「う、うん⋯⋯」


そして、清海さんは、私の両親に素性を打ち明け、私をアシスタントとして雇いたい旨を話してくれた。

期せずして、母は以前、友人の付き合いで高丘清海展を観に行ったことがあるとのこと。

「うちの娘に、先生のアシスタントなんて勤まるでしょうか?」

父の問いに、

「僕は、ちょっと神経質なところがありますからね。仕事の能率よりも、心を許せる人でないと、アシスタントはお願い出来ないんですよ。海香子さんは、まさにうってつけなんです」