夕方、清海さんが帰ったあと、私は足りない頭で一生懸命考えた。

彼の非公開プロフィールや経歴などの資料なら、全て受け取ったが、試しに、インターネットで名前を検索をしてみると、覆面画家であること、何やら大きな賞を幾つも受賞していることがわかる。

どんな絵を描いているかも検索してみたら、いわゆる抽象画で、難解なものだった。

あれ⋯⋯?

そういえば、渡された資料の中に、1枚のイラストがあったことを思い出し、改めて見てみる。

それは、海の生き物たちと幸せそうに戯れる人魚。

髪型のせいかもしれないが、その人魚は、やけに私に似ている。


私は、都会でバリバリ働く、クールな女に憧れていた。

県外の高専に進学したのは、誘惑の多い都会の大学に通うより、真剣に勉強だけに打ち込めると思ったから。

早く自立したいと思い、厳しい寮生活に勉強に⋯⋯常に、全力で頑張ってきたつもりだ。