私が、都会のOL生活で心を壊したことを打ち明けてから、清海さんは、晴れた日には必ず、この海に来てくれた。

「体調はどう?」

「落ち着いてますよ。ありがとうございます」

いつも、そうやって案じてくれる。

その時、ふと気付いた。

「ねぇ⋯⋯清海さんこそ、お仕事は大丈夫なんですか?よくここへ来てくれるけど⋯⋯」

「うん。実は、今日こそ本当のことを言うつもりでね」

本当のことって、何だろう?

「前に、デザイン関係の仕事をしてるって話したけど、厳密にはちょっと違うんだ」

「どういう意味ですか?」

「確かに、依頼があればデザインもやるけど⋯⋯本業は、覆面の画家なんだよ」

そう言いながら、清海さんは「画家・高丘清海」に関する資料を渡してくれる。

私は絵画には疎いので、全く知らなかったが、清海さんは、芸大在学中から、本格的に活動を始めているとのこと。