けれどそう言いながら、


「…ま、ナオの事で迷惑掛けたからな。気にすんな」


 坂本君は苦笑いをした。


「坂本君…」


 まだ気にしてたんだ。

 いや確かに坂本君の立場ならそう考えても可笑しくないのか。

ーーー坂本君はナオの中学時代の部活友達で、私にナオを説得して欲しいと頼み込んだ人でもある。


「…そんな事ないよ。私が虐められている時に率先して助けてくれたじゃん」

「だって俺のせいだろう。ナオの為に動いてくれていたらと思ったら、悪い人間に目を付けられて、逆に円嘉に虐められるとか」


 ミイラ取りがミイラに。そんな笑えない状況になったのは請け負った私の責任だし、坂本君が責任を感じる事では、とそのまま言おうと思って考え直す。
 

「ーーーきっと私達は何もしなくてもああなったよ」

 
 今思い出してみても、結局私が円嘉の事を理解出来なかったのが1番の原因に思える。

 それが人を巻き込んで大きくなった、それだけなんだ。


「唐堂…」

「はいはい!この話は終わり!折角お姉さんチケットくれたし、坂本君とも久々に話せるんだもん。楽しもう」

「…そうだな、蒸し返して悪かった」

「よしレッツゴー!」

「唐堂ここ美術展」

「あ、ごめん」

 
 近くにあったお静かにと言う文面に、すみませんと心の中で謝っておいた。(意味ないけれど)